前日はこの季節にしては珍しいほどの温かさで、午後になって少し雨が降った。そのちょっとした雨が、上流に残っていた雪を溶かして川は一気に増水したという。足を滑らせたユリアが川に落ちたのを、ファラーが咄嗟に助けに入ったが、水流は激しく、二人は抱き合ったまま流され、かろうじて流れの少し澱んだところで岩にしがみついた。バーラスが無事を確認して大急ぎで館(やかた)へ縄を取りに帰ったが、戻ってみると、もうその…
[連載]ヴァネッサの伝言 故郷
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第31回】中條 てい
足を滑らせたユリアが川に落ちたのをファラーが咄嗟に助けに入ったが、水流は激しく、二人は抱き合ったまま流され…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第30回】中條 てい
オージェにいたファラーとユリアが死んだ……死んだ? 母までも!
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第29回】中條 てい
「何でこんなものを連れてきたんだ! こいつは魔境の民だぞ。ああ、おぞましい。ああ、気味が悪い!…」と罵声を浴びせられ…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第28回】中條 てい
耳を覆いたくなるような病人の呻き声。「魔境の民」と差別され続けた異邦の医師リリスは、蔑まれる中で染め物商の妻を診ることに…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第27回】中條 てい
マルゴはラフィールの頬に唇を寄せた。ほんの一瞬、気恥ずかしい口づけをしたが、弾かれたように身を離し「二人だけの秘密よ」と…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第26回】中條 てい
栗色の明るい髪が肩に届いて顔立ちが美しい少年がくすりと笑ったその一瞬、マルゴ姫は胸を射抜かれた。あの微笑み……
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第25回】中條 てい
マルゴには忘れられない記憶がある。それは、ガブリエルの腕に抱かれて馬を飛ばし、まだ誰にも明かされていなかった秘密の故郷へと…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第24回】中條 てい
才能を認められ、奥方からの贈り物である新しい机に胸躍らせるラフィール。しかし広間で待ち受けていたのは、兄への嫉妬に燃える…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第23回】中條 てい
夫を毒殺したという噂のあるイヨロンド。彼女から先日急死したゴルティエに贈ったものと同じという葡萄酒を贈られ…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第22回】中條 てい
アンリ王子に仕えるジェローム。10年の奉公に終止符を打ちたいと父に直訴するも受け入れられず…。彼の苦悩と王位継承の行方とは
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第21回】中條 てい
イヨロンドについて世間は悪者とばかり決めつけるが、本当にそうなのか……ジェロームはそんな思いを抱くようになってしまい…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第20回】中條 てい
因縁深いカザルスの息子ジェロームに忍び寄るイヨロンド。彼女からの執拗な誘いと不吉な予感…ジェロームを待ち受ける運命とは?
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第19回】中條 てい
「これからはシャン・ド・リオンの動きに十分注意しておけ。そろそろあの獅子が目を覚ますかもしれぬぞ」
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第18回】中條 てい
祖父の異変、床に広がる赤い染み…。「こちらへ来るでない」十歳の溺愛する孫娘に遺した酒豪の領主ゴルティエの最期の言葉
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第17回】中條 てい
シルヴィア・ガブリエルが一人でこそこそ動いている時は、何をする気なんだと不審に思ったもんだが…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第16回】中條 てい
出世をしたとマルセルが羨ましがっていたので、どれほど大きな工房を構えているのかと期待して訪ねたが…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第15回】中條 てい
同じ村で育ったマルセルと自分が、なぜ差別されていくのか…。その理屈が納得できず複雑な思いを抱いた
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第14回】中條 てい
「夫の両親がね、ヴァネッサの者とあたしが喋るのを快く思わないのよ」変わらぬ友情と変わる身分。ベネが胸に秘めた想いとは?
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第13回】中條 てい
ヴァネッサの民が開放されて3年半、プレノワールの領民として生まれ変わろうとしていた村人たち。ただ、扱いは人によって不平等で…
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小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第12回】中條 てい
元々は奴隷の子だったバルタザールを、見どころのある子だと父が拾い上げた。父の息子が自分ではなくて彼であればよかったのかもと…
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