「そのジェローム様が、何であんなに不機嫌そうだったの? むっとしているみたいだったよ」バルタザールから一通りの経緯を聞いたあとでも、ラフィールはさっきの青年のあからさまな様子が腑に落ちない。「まったくお前って奴は、人の顔見りゃいつも、何で何でって、まるっきりのガキだなあ」ヴァネッサの民は世間と触れ合うことがなかった分、ややもすると下心もなければ遠慮もない。妙な気を回さず好奇心に素直だ。呆れた顔を…
［連載］ヴァネッサの伝言 故郷
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第11回】
――弱気な! なぜ我らがいつまでも下手に回らねばならぬのか! 先ほど交わした父とのやり取りが頭を駆け巡っていたところ…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第10回】
鳶色の髪に少し気難しそうな整った顔立ち、立派な身なりのその青年は、バルタザールの姿を見つけると何か物言いたげな様子を見せたが…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第9回】
さっきの少年がシルヴィア・ガブリエルの弟か……。あれからもう何年も経ってしまったが、ガブリエルとの出会いを振り返りながら…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第8回】
「あいつの血を分けた弟のラフィールですよ!」ああそうか……と頷いてイダがしげしげとラフィールを見つめ…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第7回】
兄ガブリエルの恩人である老医者イダのもとへ。扉を開け放つと、皺だらけの老人の顔が覗き「馬鹿たれが!」としゃがれた声で…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第6回】
僕らはやっと外に出られるんだ！ そう歓喜した日、村を解放するために戻ってきた兄ガブリエルの姿が神々しく、今も心に焼き付いている
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第5回】
十六歳になったばかりの少年、ラフィール。近寄りがたかった美貌を持つ兄ガブリエルに比べると、親しみやすい表情をしているが…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第4回】
十九歳という若さでシャン・ド・リオンの領主となったアンリ。愚鈍そうな風貌の裏で、したたかな計算をし、来るべき時を待っていた
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第3回】
二百年もの間、誰に知られることもなくひっそり隠れていたギガロッシュの村。ある日突然、この村に八十騎もの兵がやってきて…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【第2回】
二百年閉ざされていた村に初めての訪問者が来た。この男が、どうしてこの村の存在を知っていたのかと村人の不安は膨れ上がり…
-
小説『ヴァネッサの伝言 故郷』【新連載】
仮死で生まれ、聡明さと比類な美貌を持つシルヴィア・ガブリエル。その彼が突然姿を消してから三か月。村にはある異変が起こった
- 1
- 2
