第一章 新生

まあ、ここに座れよと木箱の端に寄って席を空けるマルセルに、久しぶりに再会した大仰(おおぎょう)さは微塵もない。

ラフィールが横に腰を下ろすと、やっとマルセルは下から上へ眺め上げ、

「大きくなったなあ、お前」と驚いてみせた。

「当たり前だよ。三年半も経っているんだよ」

「三年半! ほう、そんなに会ってなかったかなあ」

マルセルは信じられないという顔だ。

オージェに向かうラフィールを見送った記憶はあるが、せいぜい四百人がどこへ行くともなく一つ所で暮らしていた習慣からか、傍にいるのが当たり前すぎて、近頃ちょっと顔を合わさなくなったくらいに思って過ごしていた。

「四か月ほど前にオージェから戻って、この間までラトリスに行っていたんだ。マルセルはこっちで暮らしているの?」

「いいや、俺はこの城下で一年働いて、来年はラトリスに戻る。村の人間がなるべく早くここに馴染めるようにって、一年ずつで入れ替わっているんだ」

「ああ、だから向こうで会わなかったんだね。みんなそうやって交替しているの?」

「農作業をやってる奴はな。収穫が終われば交替なんだが……俺は、ずっとこっちにいたい」

ふぅとついたため息には理由のあるマルセルだったが、「どうして?」と無邪気に顔を覗き込んでくるラフィールには気を削(そ)がれた。

そうか、こいつはまだ何も知らないんだ。

「お前はいいなあ。村にいた時のままだよ。ラトリスにいて何も思わなかったか?」