第一章 新生

階段の途中で男が下りてきたので、ラフィールは身を寄せてすれ違った。それほど細い階段だ。出世をしたとマルセルが羨ましがっていたので、どれほど大きな工房を構えているのかと期待したが、この程度なのかと、がっかりした。

だが、戸を押し開けて入ってみて、ラフィールは目を見張った。

中は表から眺めていたよりもずっと奥行きがあり、がらんとするほど広い室内では、意外に大勢の人間が仕事をしていた。

ゆったりと十分な間隔で置かれた作業台に向かう職人が五人。うち四人は見知った村の者だが、一人は知らない顔だ。

それとは別に、少し離れた一番奥の作業台の周りを六人の年若い者が取り囲んで立っている。自分が入ってきたのも気づかずに仕事を続けているので、わざと物音を立てて注意を引くと、奧の取り囲んだ若者の間から作業台に座っていたデュディエの顔が覗いた。

最初は、邪魔が入ってちょっと迷惑そうな顔を向けたデュディエだったが、戸口にいるのがラフィールだと気づくと、破顔して喜んだ。

「ラフィールじゃないか! 誰かと思ったよ。大きくなったな」

自ら戸口へ飛んできたデュディエは、作業台を囲んでいた若者らに、ちょっと休憩だと告げると、ラフィールをさらに奥の小部屋に案内した。

「随分と奥が深いんだね」

ラフィールはきょろきょろと眺め回した。

「ああ、俺も最初は驚いたよ。かなり古い建物なんだが、あとで周辺に家屋が立ち並んできたら、ここだけ道と向きが合わなくなったらしい。そんなこと考えられるか? お前が入ってきたのは実はこの家の側面なんだ。本来玄関だった所はこの下辺りにある」

デュディエは床を指差して笑った。