第一章 新生

「その言葉を聞いたら、きっとあの二人は喜ぶと思うけど、犠牲だなんて……そんなことファラーはちっとも感じてないよ。僕には何も言わないけど、こんな形で村の解放にかかわれたことがファラーには誇りなんだよ。僕にはそう見える」

ラフィールの言葉にデュディエの視線が和らいだ。

「それはそうと、随分大勢の人がいるけど、あれが全部お弟子さんなの?」

「ああ、さっき俺の作業台を囲んでいた連中はこっちへ来てから弟子入りしてきた奴らさ。何のかんの言っても俺たちの技に興味があるのは確かで、よその工房が弟子を送り込んできたりもする。

俺の腕なんか、ファラーから見ればまだまだなんだが、こっちじゃな、俺の技でも結構なもんなのさ。驚いたぜ、ご領主のカザルス様からお褒めいただいて、俺の細工したものが高い値で売れていくんだ。お前、売れるってわかるか? 金に換わるんだぜ」

デュディエは身を乗り出して熱心に話す。

閉塞されたヴァネッサの村には通貨などなかった。大家族として自給自足の暮らしを営んでいた彼らは、得意な仕事を分担して必要に応じて物を作り出すだけだ。

それが彼らの生活様式で、自分たちが作り出した物の価値など考える必要もなかった。だが、生き甲斐のように磨き、熟達した彼らの技が、こちらの世界では大金に換わるという形で評価される。

「さっきマルセルがデュディエやアリックスのことを羨ましがっていたよ、いい暮らしぶりだって」

「マルセルが?……まあそうかもな」

デュディエはちょっと考え込んで、不承不承相槌(あいづち)を打った。