マルセルもベネも、デュディエさえも、みんな何かしら望まない変化を受け入れなければいけないのだろうか。

「僕はまだあまりここの暮らしに馴染みがなくて、ちょっと取り残された気分だな。だけどデュディエ、正直なところどうなの? ギガロッシュから出てこなかった方がよかったと思ってる?」

ラフィールは心配げにデュディエの顔色を窺ったが、彼は真面目な顔で向き直ると、即座に首を振った。

「それは違う。こうなってよかったに決まってるじゃないか。こうしてああだこうだと言うのも、お前にだから言うが、境遇が違ってしまった連中の手前、あんまりはしゃいでもいられないからさ。

こっちへ出てきたら、俺たちの知らないことだらけだし、技だってもっと磨ける。村じゃ考えも及ばなかったことがこっちでは可能だ。ファラーに初めて鏨(たがね)を持たせてもらった時の喜びを、俺は毎日また感じているよ。俺の仕事に目を輝かせ、感嘆してくれる人がいるってことが、たまらなく嬉しいんだ。

シルヴィア・ガブリエルが一人でこそこそ動いている時は、何をする気なんだと不審に思ったもんだが、今はよくぞこの戻り道を開いてくれたと感謝してる。本当だぜ。それをあいつに伝えてやる間もなかったことが、今になると悔やまれるよ。

まあその恩返しってつもりでもないが、何か困ったことがあったら俺に言ってこいよ、いつでも力になるぜ」

そう言ってみたデュディエだったが、急に気がついて、

「そうか、お前にはちゃんとご領主様がついていなさるんだったな」と笑った。

【前回の記事を読む】出世をしたとマルセルが羨ましがっていたので、どれほど大きな工房を構えているのかと期待して訪ねたが…

次回更新は12月5日(木)、18時の予定です。

 

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