母は僕の部屋に来て、
「はやと、一緒にごはんを食べようよ」
とうるさい。母は父にネチネチと文句をつけた。
「せっかくじぃじがカツオが好きだって言うからカツオの刺身にしたのに、食べない」
「食べてるだろ! 食べてるのに何言ってるんだ、バカ! うるさくてしょうがない」
じぃじは体調が悪いからいたわってあげなきゃならない、と母に説明する。
ゆっこが病院で、家族の生活状況をソーシャルワーカーと相談し、家事代行サービスを雇おうということになった。余命あと三か月。
父が生きている間は、父の料理を作ってもらう、料理専門の家政婦だ。ヘルパーが、「お粥(かゆ)は作れません」というので、ほとんど掃除しかやってもらってなかった。
料金は一時間四千円と高かったが、兄にも連絡をとり、これまで父はがんばって働いてきたのだから、父の遺産は、父自身のために使ってしまおう、ということで合意した。
衰弱した父は二階の自室へ行くことが困難になり、一階の応接間にレンタルの介護ベッドを置いた。ケアマネージャーの資格を持っている友だちに訊いたら、要介護5ではないかと言われた。
「もしじぃじが倒れていても、救急車は呼んじゃだめだよ。警察に家宅捜査されるから」 あとで知人に聞いたら家宅捜査はされないそうだが、ゆっこが言い放ったこの言葉は、すごいプレッシャーとなった。
リビングにあるテレビを応接間に持っていこうという話にもなったが、テレビを観るためにリビングまで歩かせたほうが体に良いということで、そのままにしておくことにした。
「リビングに行きなよ」
「じぃじがいるから、嫌だよ」
父からは、「毎朝さっちゃんが話しかけてきて、うるさくて仕方ないから、午前中は塗り絵をさせていろ」と言われた。
父がリビングにいるときも、母が「はやともおいでよ」としつこく言ってきて、休ませてくれない。朝も、「じぃじと一緒にごはん食べなよ」と言っても「やだよ、はやと、一緒に食べようよ」と超うざい。テレビを観ている父にも、「じぃじは応接間に寝るんでしょ?」と、しつこい。
父が折れて応接間に行くと、母は「いいお身分だこと。一階に寝て」と嫌味を言う。
この日記を書いているいまも、母が部屋の外から話しかけてくる。以前は父に対して献身的だった母が何でこんなに意地が悪くなったのか――認知症は脳の病気であり、性格が悪く見えるのは病気のせいだ。
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