【前回の記事を読む】観覧車の中、彼は私に「好きだよ」と熱烈に迫ってきた。私に恋人がいるにもかかわらず――
不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~
南君は、私の向かいに座り直し、何も話さなくなった。
「……南君?」
「……亜紀ちゃんに嫌われたくない。傍にいるとどうしても触れたくなっちゃうし、話してるとどうしてもキスしたくなっちゃう」
「キ、キス!?」
「うん。もう直ぐこのゴンドラが頂点に行くから、キスしても良い?」
真面目な顔をして訊かれる。もちろん駄目、と返事をするも、頬になら良い?と訊かれ……、何故だろう……私は小さく頷いてしまった。
南君が近付いて来て、頬に柔らかな感触がした。
私、彼氏がいるのに、何されているんだろう……。
そう思っても、今度は突き放す事はしなかった。何だか気持ち良かったからだ。三十秒くらい長いキスをされて、フッと唇が頬から離れると、何だか……不思議と寂しさを感じた。
「亜紀ちゃんの肌って綺麗だよね。ほっぺはもちもち触感だし。……亜紀ちゃん、顔が赤いよ? 少しは意識してくれた?」
「か、からかわないで……!」
そう口では言いながらも、鼓動が静かにドキドキしていた。このときめきは何だろう? そう思っても答えは出なかった。
私は南君の事が嫌いではないのだろう。その証拠に拒絶をしなかった。
ああ、何を考えてるんだろう……! 私には俊雄さんがいるっていうのに。
南君にときめいた自分を戒めるように、両頬をパンと叩いた。
「あ、亜紀ちゃん?」
「私には彼氏がいるから、やっぱり南君とは――」
「ストップ! そんなに早く結果を出す事ないでしょ。彼氏への想いよりも俺への想いが上回れば何の問題もないし」
「でも――」
「はい、ストップ! 亜紀ちゃん、彼氏と何かあったんでしょ? 河合さんから聞いたよ。何か問題が発生したって」
真由ってば、勝手に……!