「南君には関係ないよ。これは私達の問題だから」
「関係あるよ、亜紀ちゃんが悲しんだりするのは嫌だから」
南君の優しい言葉に、何故かスーッと涙が流れた。
「吐き出したら?」
「……」
吐き出したら、私の気持ちが俊雄さんから離れてしまいそうな気がした。でも、抱えている問題を消化できないのも事実で、ストレスだけが蓄積されている今、少しだけなら、と南君に対して心の扉が少し開いた。
私は少しなら良いかなと思いつつ、彼氏がお見合いをしたとだけ呟いた。
「何で!? 彼女がいるのに?」
ごもっともな反応だ。誰だってそう思うだろう。
「相手は社長の娘さんで、社長からの押しが強くてどうしても断れなかったからって」
「……亜紀ちゃん。そんな男やめた方が良いよ。これは俺の方を向いて欲しいから言ってるんじゃなくて、この先、亜紀ちゃんが苦労するのが嫌だから」
「苦労?」
「普通は……常識として恋人がいるのにお見合いなんてしないって。いくら相手が社長の娘だとしても。それは裏切り行為だよ。この先、そういう『断れない』優柔不断さが、亜紀ちゃんを幸せにできるとは思えない。そうじゃない?」
「……」
何も反論できなかった。私だってそう思う事があったからだ。『優しい』と『優柔不断』は紙一重。今回のお見合いは、俊雄さんの優しさがお見合いに繋がってしまったと思っていたけど、南君に『優柔不断』だと言われて、そうだ、と思えた。
「それで? お見合いの結果はどうなったの?」
「それは……」
とても相手の家に泊まったなんて言えない。そんな事言ったら……言ったら、南君は俊雄さんに対して怒るか……私に対して対応を詰めてくるかもしれない。それは面倒だと思った。
「もしかして、一晩、お見合い相手と付き合ったとか?」
「え? な、何で……あ……」
「そうなんだね」
「ち、違うの! ただ相手の家に泊まっただけ! 家には社長もいたし――」