【前回の記事を読む】10日間風呂に入らず、下着も取り替えていなかった母…訪問看護の相談中、僕は姉から「はっきり言って使えない」と言われ……
第一部 父
在宅医×訪問看護師×ヘルパー
「要介護度の一次判定の結果を基(もと)に計画を立てます。基本的には歩けるか歩けないかが要支援の境だと言われていますが、お母さまの場合だと、要支援2、もしくは要介護1だと思っています。私の見立てでは」
松野所長は、母の見立てを甘く見ていたようだ。
ゆっこがたずねた。
「デイサービスはレクリエーションがあるところが母に向いていると思うんですけれど、選ぶことはできますか?」
「行って体験していただければ大丈夫です」
「そこでお風呂に入ることはできますか?」
「できます。荷物の準備や着がえもヘルパーさんにしてもらう方もいます」
「掃除は私が一週間に一度来てやればいいので。食事は、できれば」
「弟さんにも必要なんですか」
「はい」
「そのご相談に区役所に行っていただいて、弟さんの枠(わく)が決まります。私のほうからも区役所に連絡を入れておきます」
ゆっこが僕に説明した。
「そうすると、はやとの分も食事を作ってもらえるわけよ。同じヘルパーさんで家事支援でね」
「お父さんとお母さん、それにはやとさんの三人分進めないといけないので、ややっこしいかもしれません」
と松野所長。ゆっこが言った。「私は四つ進めないと。実は私には障がい者の息子がいるんです。息子は身体介助百八十時間。家事援助も出てるし、移動支援九十三時間っていうのも使えるので、いまもこの家にこうして来れています」
「そうですか、いずれにしろちょっとずつ始めてみて、不具合が出たら修正していく形でやりましょう」
「ヘルパーさんを探していただくっていうのは」
「それはケアマネージャーの馬渕さんがします」
馬渕さんが会釈した。母が口を尖らせて言った。
「でも、一人でどっか行くなんて嫌だもん。はやと、一緒に行く?」
余命三か月と言われ、家政婦を雇う
父が二週間の入院から退院して家に戻った。これから二週間家で過ごして、二週間後にまた入院する。
あしたからテレビで巨人戦を観ることを、父は楽しみにしている。母のことで僕は限界まできていたので、父が戻ってきてくれて本当によかった。
「じぃじ、いつ帰ってきたの?」
「きょうだよ」
「だからか、あそこにいるのは」
父がいるから、うるさいクッキーを部屋で放したらまずいかなぁ、と思ったら、子どもみたいに父に突進していくクッキーがいることで、家の中が明るくなった。