「そう? 先生かっこいい? よく言われるんだけどね」
「えー、自分で言う? でも先生との時間がずーっと続けばいいのになって正直思うよ。陽葵が高校に行っても、教えてもらえないかな?」
以前からなんとなく彼女の想いは感じ取っていた。しかし俺は社会人、彼女はまだ中学三年生だ。
「とりあえずは今やるべきことを頑張るんだ。中二の総復習も並行してやっていくよ。受験で頻出問題は中二の数学なんだ」
彼女の気持ちに気づかないふりをしてはぐらかした。
唐突に陽葵が手を握ってくる。
年甲斐もなくドキッとして手汗が湧いた。
「手相みてるだけだよ。ウンウン、恋愛運はまあまあかな。生命線は短いね」
これは陽葵が精一杯自分の気持ちを伝えようと食い下がっているのだと感じた。
聡明な陽葵からすると同級生の男子は子どもに見えるのかもしれない。もし俺たちが付き合うことにでもなろうことなら、陽葵の両親は猛反対するに違いない。俺は家庭教師としての信頼を、両親から得ているだけに過ぎないのだ。
年の差もさることながら、定職に就いていない俺。たとえ同い年の女性が告白してくれたとしても、バイトだけで食いつなぎ、俳優を目指しているなんて知ったら、ヒモになられるんじゃないかと引いてしまうことだろう。
次回更新は8月5日(水)、14時の予定です。
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