「内職も禁止だ。なぜなら学校の授業には強弱があるんだ。学校の先生が、ずーっと力を込めて説明してる訳じゃないんだ。その授業の中でも力を抜いている時もあるんだ。特に力を入れて説明するところは、必ず定期テストに出るんだ」
「ほー、経験者は語るねー」
全くおちゃらけた生徒だが、そこが可愛くもある。
「それから公立の入試問題は難問奇問の類はない。これからは単元で苦手なところも克服していくよ」
とは言え、ここまで教えたところは、俺が帰ったあと自分なりに復習していたのだろう。次の授業の時、確認問題を出してみるが、ほぼ完璧なのだ。ここのところ順調にテストの点数もアップしている。
正月も明け、どんどんと入試の日が近づいてくる。
「先生、陽葵はどうですか?」
珍しく早く帰宅したお父さんが尋ねてくる。
お父さんに会うのは久しぶりだ。
「二学期の数学の定期テストの成績は承知しているのですが、入試となるとやはり心配でね」
「一学期の頃は遅れを取り戻すために中一~中二の単元辺りを集中的にやっていましたもので。でも二学期は学校の授業にも追いつきましたから、その成果は感じていただいているかと思います」
俺は余裕の表情で言葉を返した。
実際のところ、これまで教えた範囲はほとんど問題ない。それどころか数学の問題を解くのがなんだか楽しそうだ。
「お父さん、今は公立高校の過去問は問題なく解けますよ」
そう返すと、お父さんは安堵の表情を浮かべながら部屋を出て行った。
陽葵が言う。
「前にも言ったけど、学校の数学の先生キモくって、数学嫌いになっちゃったんだよね。でも先生が私の好みで、しかも教え方がスマートだから、この調子で頑張れると思う」
ペロッと舌を出しながらくったくのない笑顔を見せる。