【前回の記事を読む】「繊細過ぎる子なので…」と心配する生徒の母親。私があることを伝えると、母親の表情はパッと明るくなり…期待させすぎたかな

第三景 歩夢

授業を日々重ねて、今は英語も数学も中二の一学期半ばの単元まで進んでいる。

「英語の文型はわかるかな?」

「SVOやSVOC?」

「そうそう、語順を覚えながら疑問文や否定文も同時に覚えていこう。それから不規則動詞はどのくらい覚えてるかな?」

「規則動詞はわかるけど、不規則動詞はあんまり……」

「じゃあ、これからの宿題。不規則動詞の現在形・過去形・過去分詞をセットで覚えること。1日5個でいいや。それだけで10日で50個覚えることになるから相当すごいことだよ」

「そうだね。それってすごいよね」

次の授業の日を迎えた。

「宿題はできてるかな?」

「うん」

歩夢は自信ありげだ。

「よし、今日は覚えたての過去分詞を使った単元をやってみよう。現在完了だ」

過去分詞を覚えているので、スムーズに学習が進む。

数学も順調だ。連立方程式や図形、基本問題はほとんど問題ない。確率が少し苦手なので、丁寧に教えた。三学期も終わりに近づいた頃には、中二の範囲はすべて終わった。

「どう? 達成感はある?」

「うん。今度模試受けてみようかな」

「いいねぇ。それも歩夢が自分で積極的に選択できたってことだ」

自信がついてきたようだ。性急に勧めることはしないが、ひょっとしたら中三になったら、学校に行けるかも知れないと思った。

「さぁて、次からは中三の単元の予習でもするか」

「はい」

会ったばかりの頃とは違い、自信に満ちている。因数分解や不定詞などをコツコツと学習する。意欲も手伝ってか中三、一学期の中間テスト辺りまでの単元はこなせている。

「ところで、お母さんに聞いてるかな? 俺は三学期までの契約なんだ。だから、もうすぐ歩夢との授業は終わりなんだ」

「うん、聞いてる」そう頷いた。しかし、そうした現実を突きつけられるまで、ずっと半信半疑だったようだ。

「じゃあ、僕はこれからどうすればいいの? もう一人で勉強しなくちゃいけないの?」

「うーん、それはよくわからない。歩夢とお母さんが決めることだから」

俺は済まなそうに、そう言って続けた。