第二景 陽葵

誠先輩から「俺の親戚なんだけど、教えてみない?」と言われた。先輩が教えればいいのにと思って言おうとしたが、間髪入れずに

「昔っから遊び相手になったりしてたもんだから、俺が教えると、おざなりになっちゃうんだよね」。そう言われた。

「それにお前、授業のノートは抜かり無くとってたって聞いたし、教え方も上手いんだってサークル仲間から聞いてるよ」

先輩は卒業してしばらくたっている。毎年OB会に参加しているのだろうか。俺はくすぶった生活をしているから、今までOB会には出席したことがなかった。初めて出席するOB会で、授業態度のことなんか仲間から聞いているなんて怪しいもんだ。

思い返せば、何か魂胆がなければOB会で、壁のシミになっていた俺にわざわざ声をかけてきて、近況を聞くはずがなかった。そのとき俺は誠先輩に、OB会に出席したのは、所属している地下劇団のチケットを売りさばけないかと淡い期待をもっていたことを話した。

すかさず誠先輩は俺を半ば強引に、先輩達が歓談している渦の中に放り込んだ。そして、誠先輩は俺が舞台のチケットを捌ききれていないのを気遣うように、そこにいた他の先輩達にPRし、チケットの買い取りを勧めてくれた。

中には、「おい、清水、友達の分も買ってやるよ」と三枚も四枚も買い取ってくれる先輩もいた。チケットを売ることに苦労している俺にここまでしてくれたものだから、大きな借りができていた。事務所で誠先輩から家庭教師の話を持ち掛けられたとき「あぁ俺、詰んだ」そう独り言ちた。

「日を改めて案内するから、それまでに簡単にプロフィール作っといてよ」

先輩の圧に押され、しょうがなく俺は頷いた。

次回更新は7月8日(水)、14時の予定です。

 

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