【前回の記事を読む】英語も国語も学校で好成績を修める自慢の娘。だが、ある教科の定期試験をきっかけに、他教科の成績は崩れ始め……
第二景 陽葵
一学期も終わる頃、中二の数学はほぼ終わりに近づいた。飲み込みが早いので、予想以上にカリキュラムが進む。
塾長の誠先輩とは、生徒のことで定期的に意見交換している。
「どう、陽葵のやつは?」
俺の初めての生徒であり、親戚でもある陽葵のことは特に心配のようだ。
「今のところ問題ないですよ。中二の数学はもう終盤です」
「えっ? もうそんなに進んだの?」
「もともと勉強が嫌いな子じゃないみたいです。数学が苦手だったのは、数学の先生が苦手だったことに原因があったみたいですよ」
「陽葵は人懐っこいところがあるんだけど、ほんとダメな人はダメみたいなところがあるからな」
「そういう意味では、俺は合格ってところですかね」
安堵しながら答える。
「じゃあ、夏休みも頼んどくよ」
「はい、嫌われないよう頑張ります」と言って、先輩とグータッチする。
夏休みは、これまでの遅れを取り戻す絶好のチャンスだ。陽葵もよく分かっており、数学以外は自習に励んでいる。たまに理科の質問を受けるが、質問が高度なため即座に答えられないこともある。全く見当がつかないときは、同僚の家庭教師に助けを求めることもあるが、なんとかやっている。
「よし、いよいよ中三の数学だ。平方根からやっていくよ。平方根っていうのは、例えばaの平方根だけどこれは√aとー√aがあるんだ」
「これ代数って言うの? 因数分解も数学って感じがしたけど、どんどん数学らしくなってきたね」
夏休みが終わる頃、中三の一学期の単元もほぼ終わりにさしかかった。これで二学期は学校の授業と平行しながら入試問題に取り組むことができる。
「陽葵ちゃん、二学期は授業と並行で進めることができるけど、俺との授業は学校の授業の復習にする? それとも予習にする?」
「うーん」
陽葵は腕組みしながらしばし思考中である。
「予習にしてもらおうかな。先取りしてくれた方が、学校の授業、余裕で受けられるから」
「おいおい、学校の数学の授業、余裕こいて寝たりすんなよ」
「寝ませんよ~だ。内職するかもしれないけど」