【前回の記事を読む】すぐに駆け寄ったが、間に合わなかった…後頭部から出血。病院では髪を剃った跡もないのに、医師は「縫合した」と言う。よく見ると……
第一章 生命力を支える家族
障がいがありますが、なにか?
緊張のあまりの便失禁
どちらも三十代と思しき大柄なご夫婦が、幼児二人を連れて面談にやって来た。
お母さんは長男と手をつなぎ、お父さんは乳児の次男を抱っこしていた。お母さんと長男は面談室に入ってきたが、動きたい盛りの次男を抱いていたお父さんは、挨拶だけして車に戻っていった。
お母さんが差し出した申込用紙に目を通すと、長男は四歳になったばかりで、次男は二歳、長男はまだ言葉が出ず、おむつも取れていなかった。
公的療育機関の発達相談で彼は重度の自閉症と言われたと、お母さんは落ち着いた口調で言った。
彼は自閉症にありがちな多動はなく、お母さんの横に並べて置いた園児椅子に体を固めて座っていた。緊張感があると体や手足をもぞもぞ動かす子は多いが、彼は緊張のために固まったように動かなかった。
彼の生育状況を聞き出している途中、お母さんと私は「ん? におうね」と顔を見合わせた。
彼は椅子からちょっと腰を浮かしていた。彼の顔を見れば、明らかにいきんでいるあの時の顔。彼が固まっていたのは便意のせいだったのだ。
お母さんと私が彼の背後に回ると、お尻の後ろがもっこり膨らんでいた。
お母さんは「ちょっと失礼します」と言って、入り口の扉の近くに置いた布製の大きな袋を開けて、中から紙パンツやウェットティッシュ、着替えのズボンなど一式を取り出した。
そして彼を椅子から立ち上がらせ、床に仰向けに寝かせた。そしてお母さんは慣れた手つきで彼のズボンを脱がそうとした。私は慌ててお母さんを止めた。
「寝かせておむつ交換していたら、赤ちゃん時代と変わらないではないですか。そのスタイルは彼にとっても年齢的にも恥ずかしいですよ」
それから私は彼を立たせて、「立ったままでも足を汚さず、うんちの付いたおむつを交換することができますよ」とお母さんに言った。そして、実演してみせた。
まずうんちの付いた紙パンツを腰から少し下げて、うんちの上にティッシュをかぶせた。うんちが隠れるくらいティッシュをかぶせて包み込み、紙パンツが脚に接触していないことを確認してそぉっと下まで下ろし、それから彼の足を抜いた。
最後に乾いたティッシュでお尻を拭き、さらにウェットのお尻拭きで下半身をきれいにして新しい紙パンツを穿かせた。その間お母さんはずっと横で黙って見ていた。
こばとでは二歳過ぎから障がい児を受け入れているので、うんちの失敗などはしばしば経験していた。
療育時間を無駄にしないために、スタッフ達は子どもの“しも”の失敗をいかに素早く、きれいに処理するかも指導される。
それにしても私も初回面談でうんちを漏らされたのは初めてだった。彼はたぶん気の弱い性格で、初めての場所に連れて来られた緊張のあまり、脱糞してしまったのだろう。