【前回の記事を読む】発達相談に来た4歳男児…言葉が出ず、生活面に遅れがある一方で、多動は見られない…だが生育状況を聞くうちに“何か匂う”と思い始め……
第一章 生命力を支える家族
障がいがありますが、なにか?
家族四人で海外旅行
二人の子どもを助成金など出ないこばとのような私設の療育施設に通わせることは、経済的にも時間的にも負担が大きかったと思う。
しかし夫婦仲が良く、何でも話し合っているようだった。お母さんも仕事を持っていて、こばとの送迎は夫と協力し合っていた。
私が仲の良さに驚いたのは、家族で海外旅行に行ってきた、と聞いた時である。
偏食もある重度の自閉症児を連れて?! そう思うなんて私こそ偏見の持ち主だ、と秘かに恥じ入った。
息子達が二人とも落ち着いてきた今なら行ける、と両親はかねてから計画していた旅行に行ったのだろう。
障がい児がいるからやりたいことができないなどと、できないことを彼らのせいにするのは失礼というものだろう。
時間や手間がかかってもやろうと思えばできるのだ。障がい児を連れた家族旅行に心の中で拍手喝采した。
弟はADHDタイプの発達障がいを持っていたが、知的な遅れはなかった。同等レベルの小集団での早めの療育が功を奏したようだ。
精神面が成長し、聞く集中力がついてきて友人ができ、彼らとの会話のやりとりも続くようになった。気遣い、思いやりも芽生えた。
彼は地域の小学校の通常学級に入学した。
これをもって弟のこばとは終了。兄だけがこばとを続けることになった。
重度の自閉症の兄も行動面は落ち着いてきて、できることも増えた。運動能力は思いのほか高く、補助輪なしの自転車にも乗れるようになったし、縄跳びも上手にできた。
ひらがなの読み書きもでき、数や数字も数えたり、書いたりできるようになってきた。
二泊三日の夏合宿にも参加するようになった。言葉はオウム返しで、自発語も要求だけなので会話にはならなかったが、言われていることの理解力は向上した。
また素直で、あまり反抗的な態度はとらなかった。彼も二年生、三年生となるとできることも増え、落ち着いてきた。
予想以上に学習面では伸びたし、自発語は増えないものの言葉の理解は増えた。
お母さんも彼はこのまま成長していくのかと期待した。だが残念ながらそうはいかなかった。