時には薬に頼る手も

四年生を過ぎる頃から、彼はだんだん反抗的になり、言動が乱暴になってきた、とお母さんは顔を曇らせた。

何が気に食わないのか、まるで二歳頃のイヤイヤ期のようだ。大きい体で幼児のような行動をするので周りの者はたまらない、と言った。

少年から青年になっていく過程では彼らも例外なく反抗期が来る。彼らにとっても健常児同様の精神的な波はあるのだ。

私もお母さんから相談された時は、言動が幼いからと言って幼児扱いしたり、彼を否定したりしない方がいいですよ、と他の思春期の障がい児を持つ親に言うように言った。

しかし彼の行動は、周囲の者の気持ちの余裕を失わせるほどだった。

程なくして、お母さんは彼の行動の激しさに心身共に我慢できなくなり、医療機関に相談して投薬を試みるようになったと言ってきた。

彼の体も大きくなり、力も強くなってきているので、お母さんが疲弊しないためにはやむを得なかったのだろう。

しばらくしてから「どうですか? 薬の効果は出てきましたか?」とお母さんに聞いてみた。彼女は顔を曇らせたまま語った。

「全然、変化がないんです。薬は効いていないみたいです。学校でも行動面の荒さが目立ってきて、先生からも支援学校への転校の話が出てしまいました」

しかし、こばとでは療育パターンが頻繁に変わらず、やるべきことが目で分かるせいか、それとも学習を苦手と思っていないせいか、手に負えなくなるような彼の暴力的な場面はまだ出ていなかった。

私は処方してもらっている薬の名前を聞いた。リスパダールだと言った。

その頃、統合失調症の薬として開発された、非定型向精神病薬の一つであるエビリファイが自閉症児にも使われ始めていた。

服用している子の親から自閉症にも有効だと聞いていたので、お母さんにかかりつけの病院で聞いてみてはどうかと言った。

お母さんは通院している病院に、エビリファイの薬名を出して処方してくれるように頼んだそうだ。医師はあまり良い顔はしなかったが、処方してくれたと言う。

それを飲ませた結果、彼は二日間も眠り続けたとのこと。我慢して見守り続けたお母さんには本当に敬服しかない、医師を信じたか、薬の効果を信じたか、私の言葉を信じたか分からないが、心配だ、心配だと慌てたりしなかったのだ。

薬に対して不信感を持つ親御さんは多い。薬を処方してもらって、多動が収まり静かになったのに、子どもの変化を見て驚いてしまうからだ。

多動に悩んでいたのに、いつもの我が子ではない、とすぐに勝手に薬を中止してしまった親もいるくらいだ。

 

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3歳になっても言葉が出ない息子…療育を始めても、母の表情は暗いままだった。訳を聞くと、ぽつりと「妹も自閉症なんです」と打ち明け……

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