【前回の記事を読む】同棲を始めて1ヶ月…毎晩抱きしめてくれるのに、“それ以上”は絶対にしない彼。一緒に寝ても何も起きない関係に不安が募り……
訳アリな私でも、愛してくれますか
ずきり、と心が痛む。考えると考えるほど、泥沼にはまってしまいそうだった。大輝に言われた言葉が、フラッシュバックする。
涙が出てきそうになって、笹川の胸元に顔を押し付けた。
「……くるみさん? 大丈夫ですか?」
異変に気づいた笹川が、くるみの顔を覗き込んでくる。暗い中でも、笹川が心配そうな顔をしているのがわかった。
「あの……」
「はい?」
「そろそろ1ヶ月くらい、経ちましたよね。一緒に住んでから」
「そうですね、意外と早いものですよね」
「はい。それで……その、笹川さんは、……」
言おうか言わないか、一瞬迷いが生まれる。それでも頭を優しく撫でてくれる笹川の大きな手と体温に、背中を押された気がした。
「私に、女性としての魅力を感じていますか?」
「もちろんです。とても可愛らしい人だと思いますし、僕はくるみさんの匂いも好きです。一緒にいるだけですごく心が癒やされます」
「それは……ありがとうございます……」
思いもよらず好きなところを伝えてくれた笹川に、つい頬が緩む。しかし本当に聞きたかったのはこういうことではない。くるみはなんとか言葉を変えて聞き出そうとした。
「それはうれしいんですけど……なんていうか、その、一緒にこうしてくっついて寝るだけ……なのかなって……」
「ああ……そういう意味ですね……」
笹川はようやく察したのか、少し言葉を選んでいるようだった。
「……これは僕なりに考えたことなのですが、できればちゃんとその日を迎えたいと思ったんです。だからその、さっき今度の土曜日にデートをと言ったのですが……」
「デート……?」
「はい。それで、ちょっとしたホテルの予約をとって、ゆっくりそこで過ごそうかなと……そしてその時に、初めてを迎えられたらいいかもなんてことを考えていたのですが……」
そこまで言われて、ようやく理解した。くるみにとって初めてのそういう体験を、大事にしたいと思ってくれた笹川が、特別な日にしようとしてくれていたことを。
「すみません、何も気づかなくて……」
「いえ、僕もちゃんと言葉にすればよかった」
笹川はそう言って、くるみの唇にキスをする。2,3回ついばむような口づけを繰り返して離れた。
「これ以上すると寝れなくなりそうです」
困ったように眉を寄せてそう言ってくる笹川に、とくりと胸が高鳴る。
「じゃあ、……今日はもう寝ましょう。すみません、寝ようとしてた時に」
「いえ。くるみさんの不安が解消されたならよかったです」
常に自分のことを考えてくれる笹川に感謝しながら、くるみも眠りについた。