【前回の記事を読む】「何も気づかなくてすみません…」彼はそう言って、彼女の唇を何度もついばんだ。だが胸が高鳴ったのは、キスのせいだけではなく……
訳アリな私でも、愛してくれますか
そう決めたら行動は早い。お泊り用の寝巻と洗面道具だけ玄関先にまとめてドアを押し開けた瞬間。
「あ」
「えっ、……何してるの、秋斗」
「そっちこそ」
「コンビニにでも、行こうかなーって」
「俺もそれ誘いに来た。うち今何も食材ないし、夕飯ないから買いに行こうかなって」
(そうくるか……!)
1人で行きたいなんて言えず、理子は秋斗と一緒にコンビニへ行くことになった。
コンビニから帰ってきて食事を済ませたあと。なんとか秋斗に先にお風呂に入ってもらって、風呂上がり、鏡に向き合う。
(やっぱ、こんな顔見せられない)
自分の顔を見ながら、愕然とする。自分が可愛くないのだということを、まじまじと実感してしまった。
(化粧、しちゃおうかな……)
一瞬そんな思いがよぎるも、化粧品はリビングに置いてきてしまった。少し前の自分が憎らしい。理子はそっとバスルームを出て、顔を隠しながらリビングへと向かった。
「上がった?」
「あ、うん……けどちょっと……」
「何してんの?」
顔を隠しながらメイク道具をとろうとする理子を不審に思ったのか、秋斗が近寄ってくる。
「ちょ、待って! だめ、近づかないで」
「なんで?」
「今、すっぴんだから……」
その一言で察したらしく、秋斗はメイク道具がある方を見た。
「それでアレ、取りに来たってこと?」
「そう……わっ!」
理子がそう言った瞬間、秋斗が理子を引き寄せる。その勢いにバランスを崩して、秋斗の胸元に飛び込む形となった。
「ダメだって……!」
慌てて顔を背け、手で隠す。しかし壁際にジリジリと追い詰められてしまい、その手を秋斗が取った。
「やだ……」
「なんで? 俺は理子の顔好き」
「……お世辞はいらない」
「お世辞なんて俺は言わない。そのくらいわかってるだろ」
おそるおそる見上げた秋斗の顔は、いつになく真剣だった。その目が、自分を見つめている。
「ごめんね、こんなブサイクで──」
その言葉を封じるように、唇が重なる。
「もうそういうこと言うなって」
「でも……」
「俺は理子の顔が好きだし、可愛いと思う。だから自分がブサイクだなんて言うな」
「うそだ……」
「俺の目を見ろ。これでも、嘘だと思う?」
秋斗の眼差しに、嘘はない。まっすぐに自分だけを愛してくれる人が向けてくれる視線の優しさを、理子はこれまで知らなかった。
(この人にだけ可愛いと思われたら、他の人なんてどうでもいいか)
自然とそう思えるほど、秋斗の気持ちが伝わってくる。