「鍬下です」
「あの、先日お会いした福原皆実です」
「ああ、福原さん。どうかされました?」
「あの、どうでもいいことだとは思うんですが、思い出したことがあって」
「何ですか?」
「ほら、言ってたじゃないですか。河原賽子のこと」
「はい。何か思い出しましたか?」
「いや、その河原賽子って……」
「えっ」
鍬下は皆実の話に耳を疑った。
「そうですか。ありがとうございました」
鍬下は呆然としながら電話を切り、山口に謝った。
「すみません、話の途中で。それで……」
目の前の山口に視線を戻した時、鍬下は異様な感じを受けた。彼はうつむいており、うっすらと目を開けてはいるが上下の瞼の間からは白目しか見えていなかった。そして口の中でぶつぶつ何かを唱えている。鍬下は一瞬、てんかん発作ではないかと疑った。
「山口さん、大丈夫ですか?」
彼は何も反応しなかった。次の瞬間、鍬下は心臓を鷲掴みにされたのではないかと思うほど、激しい胸部圧迫感に襲われた。
「うっ! く、苦しい……」
彼は立ち上がり、胸を掻き毟りながら床に激しく転倒し、意識を失って痙攣し、目を上転させ口から泡を吹いた。
「きゃーっ!」
周囲の女性たちが悲鳴を上げた時、山口はいつもの表情に戻り、慌てて鍬下に駆け寄った。
「大丈夫ですか、鍬下さん。誰か、早く救急車を」
「サイコ5――テレポート怪盗」終わり。「サイコ6――怪物の誕生」に続く。
次回更新は5月27日(水)、21時の予定です。
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