【前回の記事を読む】里親制度で女の子を引き取った、隣の一家…しかし、学校にも行かせず、近所の人は一度も顔を見たことがないまま…
サイコ5――テレポート怪盗
麻利衣と賽子はすぐに事務所に戻ったが、千晶まで一緒についてきていた。
「ほんと、びっくりした。やっぱり超能力者って本当にいるのね。怖かった」
ソファに身を投げ出して千晶が言うと、麻利衣がすかさず反論した。
「まだ超能力と決まったわけじゃないわよ。顔が変わったのだって特殊メイクかもしれないし、急に光ったのだって、スタングレネードかもしれないじゃない」
「スタングレネード? 何それ」
「SATやSITが立てこもり犯のところに突入するときに投げ入れる閃光音響手榴弾よ。さっきネットで調べたの。私たちが目が眩んでいる間に逃げ出したんだわ。きっと」
「相変わらず頑固ね。まだ、超能力の存在を信じられないの?」
「もちろんよ。超能力なんてこの世に存在するはずありません。全て科学で説明がつくはずよ」
二人の口論には全く構わず、賽子はリビングに立って部屋を見回していた。
「やはり何かが盗まれている。だがイメージが湧かないのは、おそらく私が一度も目にしたことのない物だからだろう。バナナ、おまえ、何か盗られていないか?」
「私は貴重品はバッグに入れていつも肌身離さず持ってます。部屋にあるのは教科書くらいで、金目の物なんてありません」
その時、ドクトルがリビングから出て行こうとし、廊下の手前まで来ると意味ありげに後ろを振り返った。
「ドクトル、おまえ、何か知っているのか?」
彼は尻尾をピンと立てると、麻利衣の部屋の方へ向かった。
三人がついていくと、彼は部屋の中の本棚の隙間に入り込んで丸くなった。
「何だ、そこで昼寝したかっただけじゃない」
そう言った時、麻利衣はあることに気づいた。
「ない。お父さんのノートがない」
そう言って、彼女は焦って部屋中を捜し始めた。
「お父さんのノートって?」
千晶が訊いた。
「父が逮捕された時、仕事に関する物は全て警察が押収していたの。でも1年前、もう不要になったということで、実家に返されてきたの。ほとんどは捨てちゃったんだけど、そのノートだけ形見代わりに私がとっておいたの。まさか、そんな物持っていくなんてありえない」
「何が書かれていたんだ?」
賽子が訊いた。
「アルファベットがでたらめに羅列してあるだけで、全く読めませんでした。でもその中に河原賽子って漢字で書いてあったんです」
賽子はしばらく考え込んだ後言った。
「そのノートには那花博士の私に関する研究結果が記されていたに違いない。研究成果が盗まれないように暗号化していたのだろう。神撰が何故それを知りたがっているのか、神撰本部を超能力(フォルス)でスキャンしてみよう」
そう言って賽子は目を閉じて集中していたが、しばらくすると目を開けて言った。
「だめだ。神撰本部には黒い靄がかかっていて、内部をスキャンできない。おそらく安重糸による妨害だろう。これだけ用心深く超能力(フォルス)をブロックしているということはよほど大きな陰謀を企んでいるに違いない」
「どうするんですか?」
「神撰本部に乗り込むしかないだろうな」
賽子の眼がまるでこの事態を悦んでいるようにギラギラと輝いた。