【前回の記事を読む】笑い声を漏らしながら、美しい顔をドロドロに溶かし始めた女性…その下から現れたのは、原形とは違う50代の女の顔だった。
サイコ5――テレポート怪盗
「よく見抜いたわねと言いたいけど、あまりにも遅すぎたんじゃない? 完全能力者(パーフェクトサイキック)なんて豪語しているからどんなものかと思ったら、全然大したことないのね。
私のマインドコントロール能力にずっと騙されていたんだから。
むしろ、麻利衣ちゃんの方に感心しちゃったわ。
確かに賽子をコントロールするのにかなり超能力(フォルス)を集中しすぎて、そっちは甘くなっちゃったんだけど、それでも私のコントロールを突破して犯人と指摘された時には参ったわよ。賽子もどうせ、その時に気づいたんでしょ」
賽子はむっとして安重を睨みつけた。
「質問に答えろ。私から何を盗んだのだ?」
「何を盗まれたのか分からないなんておバカさんよねえ。そんなの自分で調べなさいよ」
「だったら力ずくでしゃべらせるしかなさそうだな」
「やれるもんならね」
賽子は肩をいからせながら安重に歩み寄った。その時せせら笑いをしていた安重の体が突然目も眩むほど眩しく輝いた。全員が反射的に目を閉じ、何とか開けた時には既に安重の姿は消えていた。
「くそ、逃げたか」
賽子はほぞを噛んだ。
鍬下は今は無人となっている那花家の隣にある天野家の玄関のチャイムを鳴らした。中から小さな目をした60代のご婦人が出てきた。
「何でしょう?」
「こういう者です」
鍬下は警察手帳を見せ、名刺を渡した。
「実は国際超能力研究所のことを調べていまして、那花家のお隣なので、何かご存じのことはないかと思いまして」
「ああ、本当に可哀そうでしたよ。旦那さんは以前は大学病院の精神科で助教までされていた真面目な先生だったのに、教授と何か意見が合わなくて大学を辞めちゃって、それから急に超能力の研究をするって言い出して、あの研究所を山の上に建てたそうなんですよ。
それからはずっと山の上に籠りっきり。奥さんは寂しそうにしていましたよ。
それがある日、急にTVに出ちゃって。奥さんも事前に知らされてなかったみたいですよ。それで逮捕でしょ。
周りの人も白い目で見るし、それまでは私もよくおしゃべりしていたんですけど、人目もありますしね。それからは疎遠になってしまったんですよ」