【前回の記事を読む】宝石展示会に一流の鑑定士を連れて行くと「はっきり言ってアレは、ただのガラス玉です」…すると、展示会の責任者は狼狽して…

サイコ5――テレポート怪盗

「石原さん……」

背後から麻利衣が声をかけると彼女は急に振り返って賽子を鋭く睨みつけた。

「これは一体どういうことですか? いつの間にか偽物にすり替えられているじゃないですか。やっぱりあの時、ミスターSは金庫に侵入して本物のピンク・ムーンを盗み出して、偽物とすり替えていたんです。

何が超能力探偵ですか! あなたこそまさに偽物じゃないですか。報酬の1000万はお支払いできません。もう帰ってください!」

石原はそう怒鳴ると、再び背を向けてテーブルに両手をついて背中を丸めた。

「ちょっと待ってください」

麻利衣が言った。

「実は私も超能力なんて信じていません。だけどあの時、賽子さんの超能力が実際は働いていなかったとしても、あの金庫の警備態勢は完璧で、私たち以外誰もあそこに侵入できなかったはずです。ダイヤが貸し出された時は本物だったとしたら、監視カメラに映らないで偽物に取り換えるなんて不可能です。たった一人を除いては」

石原はおもむろに振り返った。

「何が言いたいんですか」

「あなたは金庫のセキュリティを突破できる数少ない人間の一人です。どういう理由か知りませんが、あなたはピンク・ムーンを盗み出し、偽物とすり替えておき、それが発覚するまでの間に逃亡しようと企んでいた。

でも金庫の扉や保管庫を開けることはできても、その記録が残ってしまうし、監視カメラにも映像が残ってしまう。だからあなたはミスターSという架空の怪盗を創り出し、ネットで拡散しておいた。

そしてミスターSとして犯行予告文を会社に送り付け、彼からダイヤを守るという名目で、私たちを引き連れて金庫内に入り込んだ。

そして、ダイヤが無事かどうか確認するために保管庫を開けた時、私たちに見えないようにあらかじめ持っていた偽物とピンク・ムーンを素早くすり替えたんです。

賽子さんに警備を依頼したのはミスターSなんて奇想天外な人物を簡単に信じ込みそうだったからですよね? 或いは一緒に連れていくことで自分が無実であることを私たちに証言させるためか、もしくは、私たちに罪を着せようとしたんじゃないですか?」

石原は完全にこちらに向き直った。その顔は能面のように無表情だった。

「何を根拠にそのようなことをおっしゃってるんですか? 場合によっては名誉棄損で訴えますよ」

麻利衣と石原はしばらく無言で睨み合った。その時、ずっと目を閉じて沈黙していた賽子が目を開けて口を開いた。

「盗んだ物を返してもらおうか」

「私はピンク・ムーンを盗んでいません」

「ピンク・ムーンのことを言っているのではない。それならここにある」

賽子が右の拳を前に突き出し、指を開くとそこにはピンク色に輝くダイヤがあった。麻利衣は驚いて机の上にあるダイヤモンド・テスターを手に取り、見よう見まねでチェックしてみた。

「8。本物……。どうして賽子さんが……?」