エゾギク
園芸委員の活動は、予想を遥かに超えて多忙を極めた。これが大安高校の最大の特色らしいが、入学案内の冊子に注意書きを必ず記載してほしいと、僕が無意味に心の中で不満を口にしたのは何回目だろう。
桜井先生の長年の知己が花屋を営んでいて、売れ残りやわけありの花をそこから安く仕入れているらしい。彼が副校長に就任してから約二十年の間は、多種多様の花が校舎を彩り、〝華の大安高校〟という世間の印象を醸成した。
通常の学級活動や、旅行・集団宿泊的行事以外は、会場の前などに花の装飾を必ず設える。
儀式的行事はもちろん、健康安全・体育的行事にも、学芸的行事にも全てだ。つまり、学校行事の細目に至るまで、園芸委員の仕事も付随するということ。
もはや、花を飾ることがメインで、学校行事がおまけになっている気がする。それほどに、大安高校にとって、花は大きな意味を持っているのかもしれない。
しかし各行事で装飾を設えれば、当然片付けが生まれる上に、それが花であれば移植もある。校舎を囲うように多くの花壇が点在していれば、日々の水やりを始めとした手入れの労苦は、体験していない人でも想像に難くないと思う。長々と表現したけれど、事程左様に、園芸委員の仕事にほぼ毎日従事しなければならず、大変すぎるということだ。
そして今も、放課後の校門に僕はいる。放課後は学級委員の仕事があるため、あかりとは校門で待ち合わせすることが定着していた。
次回更新は8月3日(日)、21時の予定です。