【前回の記事を読む】いじめられっ子をかばった結果、下校中に集団で囲まれて、砂をかけられるように。その輪の中には、かばった子の姿もあり…
ウツギ
「え? んー。相場は、森くんに突っかかったとか?」
「ううん。森を煽って、自分に砂をかけさせたんだ」
「え? どう、え?」
「必要以上に煽るもんだから、砂かけられるだけじゃ終わらなくて、膝蹴りくらったりボコボコにされてさ。で、気が済んで森たちが帰った後に、あいつが俺に言ったんだ。『これで俺たち同じだな!』って。ボコボコにされたくせして、キザな言葉言いやがってあいつ。
笑っちゃうよね。でもあの時ほど嬉しくて、家で泣いた夜はなかったなあ」
和也くんの瞳が、微かに潤むのを感じた。心から、嬉しかった記憶なのだろう。
「意外だね。颯斗くんって、よくも悪くもバランス人間って感じがするから、そういう目立った行動しなそう」
口ではそう言いながらも、決して意外ではないことはわかっていた。颯斗くんなら、確実にそのような行動を取ることは、記憶を思い起こせば明白だった。困った人がいたら、手を差し伸べる人。