また、放射線は遺伝子(DNA)を損傷することがありますが、人体に「放射線受容器」はありません。そのため私たちは放射線被害に気づくことができないのです。紫外線、超音波なども有害性をもつ場合がありますが、やはり体に受容器はありません。
先ほどもあげたように、感覚刺激をとらえる感覚神経の末端構造を「感覚受容器」といい、そのなかで侵害刺激をとらえるものを「侵害受容器」といいます。
侵害受容器はいわば《異常探知警報センサー》のようなものです。建物や機械など人工物の「異常探知センサー」としては地震、ガス、温度、放射線などに対するセンサーがあります。
人体に存在が確認されている侵害刺激受容器は「機械的侵害刺激受容器」「化学的侵害刺激受容器」「温度侵害刺激受容器」の3種類です。この点は、のちほど運動器の痛みや腰痛の運動療法を論じるときに重要なポイントとなるので覚えておいて下さい。
それぞれの侵害刺激には、これを特異的に受容する「侵害受容器」が存在しています。侵害受容器は種類によらず同じ形をしており、さしわたし数十マイクロメートル(千分の1ミリメートル)ほどの〝木の枝〟のような見かけをしています2。外界と接する皮膚にはあらゆるタイプの侵害受容器が存在します。
1 循環論法になってしまうが、「侵害刺激」とは「痛みとして知覚されうる刺激」である。
2 皮膚の触覚や振動覚の受容器は機能別に特別な形態をしている。侵害受容器は特殊な構造はもたず神経線維の末端が枝分かれしたような姿をしており、解剖学では「自由神経終末」という。
【参考文献】
(2) 松村むつみ『「エビデンス」の落とし穴「健康にいい」情報にはランクがあった!』青春出版社、2021年
次回更新は7月26日(土)、8時の予定です。