【前回の記事を読む】我慢は美徳ではない! 何度も片頭痛発作を繰り返すことで脳梗塞や認知機能障害のリスクが高くなることも

第2章 片頭痛の謎を解く ~最適な治療法とは

7 発症抑制薬(予防治療薬)について

コラム⑦

片頭痛と脳卒中

片頭痛もちは脳梗塞を発症するリスクがあることが報告されています。その原因は片頭痛が起こす脳血管の無菌性炎症のせいといわれています。

とくに閃輝暗点がある場合は脳梗塞のリスクが2倍ほど高まるといわれています。ちなみに前兆のある片頭痛の方にはピル(経口避妊薬)は禁忌となります。

片頭痛のある方でも適切な治療を受け、生活習慣病に気をつければリスクを限りなく減らすことができます。強い片頭痛が月4回以上起こる方は脳梗塞予防の観点からもCGRP関連抗体薬の治療をお勧めしたいです。

卵円孔開存(出産後は閉じるべき右心房と左心房の間の孔が開存している)があると片頭痛が起こりやすいという説があります。静脈の微小血栓や有害物質が肺のフィルターで除去されずに脳に到達するせいといわれています。開存卵円孔を閉鎖すると片頭痛が減るというデータもあります。

しかし今のところ片頭痛改善を目的に卵円孔閉鎖術を行うのは時期尚早というのが頭痛学会の公式見解です。

 

8 CGRP関連抗体薬とは

片頭痛の発症にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:calcitonin gene-relatedpeptide)という神経伝達物質が強く関わっていることがわかってきました。片頭痛発症時にCGRPが急激に三叉神経から放出され、CGRP受容体に結合すると痛みシグナルが大脳皮質に伝わって、痛みを感じるということが解明されてきています。

片頭痛の患者さんで、唾液中のCGRP濃度が上昇することが報告されていますし、CGRPを片頭痛の患者さんに注射すると片頭痛が惹起されるというエビデンスがあります。

このCGRPやCGRP受容体に対する抗体薬が新薬として開発され、2021年から我が国でも実際の患者さんに使えるようになりました。

モノクローナル抗体薬で、1か月に1回ずつの注射が基本です。発売順にその特徴を解説します。