【前回の記事を読む】強い片頭痛が月4回以上起こる人は脳梗塞予防としてもCGRP関連抗体薬の治療がお勧め! 2021年から新薬が使用開始に

第2章 片頭痛の謎を解く ~最適な治療法とは

8 CGRP関連抗体薬とは

コラム⑧

片頭痛と関係の深いCGRPは悪玉? それとも善玉?

今では「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)」は片頭痛の元凶と考えられています。CGRPは血管平滑筋に作用して血管を拡張することで頭痛を起こします。CGRP関連抗体薬は画期的な片頭痛予防薬として臨床応用されています。

そこで問題。このCGRPは片頭痛を起こす悪玉なんでしょうか。それともなにかよいこともしているのでしょうか。

実はCGRPは悪玉と善玉の両方の性格をもっています。

高山病や一酸化炭素中毒を想定してください。このような場合、脳の酸欠が起こります。それは危険だ、というので三叉神経からCGRPが放出して血管を拡張させ血流を保全します(これを三叉神経血管反射といいます)。血流が改善すると我々は原因がなくなったと安心してしまいます。それはまずいです。まだ原因が続いていることを本人に警告するために頭痛が起こるのです。

CGRPは生体防御反応とともに危険報知器の両面の作用があります。片頭痛の方は天気の悪化も大げさにとらえ、CGRPが放出されてひどい頭痛が起こってしまうのです。