【前回の記事を読む】「これって、映画の犯罪シーン?!」思いもよらぬ出来事に一瞬呆然としてしまい…海外旅行の失敗談とその後の教訓
12.知らぬが仏
知らないでいいことは知らないままにしていた方が仏のように穏やかでいられる。2016年8月
2016年3月、親戚のおじさまが亡くなられたと知らせを受けた。丁度妹が帰省中で二人で通夜に伺った。母には言わなかった。
母は今、介護老人保健施設で療養中。初めて施設に入ったのは一昨年の暮れ。去年はいったん快復して家に戻ったが、入退院をくり返した後、10月末から施設に入居したまま。
死は母の身近にある。80歳を超しているのだから、もういつお迎えが来てもいいようなものの、やはりできるだけ長く生きていてほしいと思う。
自分の年齢に近い方や身近な方の訃報は、母にとって精神的にマイナス要因になるだろう。取り越し苦労をする母は、いろいろ気を回しすぎるきらいもある。ショックと混乱で発作を起こさないとも限らない。
知らぬが仏。
知らないでもすむことは、知らせないようにしている。
去年2月、かつて国立大学の総長も務められた、友人のお父さまが永眠された。母もよく知っているその方のことは知らせないつもりでいた。が、新聞を見たのかニュースで聞いたのか気づいたようで、母の方から言ってきたのには驚いた。
親戚の初盆も母には黙って、私が母の代わりにお参りした。春、やむをえず遠方に引越しされた母より年上のお友達は、福岡を去られる前にお別れのつもりで母の見舞いに来てくださった。が、離れることには触れないままだった。親しい人がすぐに会えない所に行くのは、やはり寂しいだろうから。
喜ばしくないことはなるべく母の耳に入れないよう、母が穏やかな気持ちで日々過ごせるよう、皆で心がけている。