『未来行万博開催中』

プロローグ

「お母さん、今日は悦子と万博公園に行ってきたんだ」

夕食を囲みながら、利佳が母の友里に言った言葉だった。

日曜日だと言うのに、利佳の父の岳(たけ)は、朝早くにスマホが鳴って以来、会社に行ったきりだった。顧客からクレームの電話が入って、その対応のために休日出勤を強いられたのだ。

「へぇ、万博公園って、今やってる万博のこと?」

興味なさげに、箸でおかずをつつきながら話す友里に、利佳はため息をつきながら答える。

「違うよ。昔、大阪であったとか言う万博の方だよ。今日、万博公園で野外フェスがあってさ、バイト先の先輩が行けなくなったとかで、チケットを譲ってもらったから、悦子を誘って行ってきたんだ」

長年大阪に住んでいて、そのくらいの区別がつかないものなのか。利佳は、世間で話題になっていることに対する、友里の関心の薄さをあざ笑った。

「野外フェス? 何なの、それ?」

「えっ、お母さん、そんなのも知らないの。音楽をやっている人たちが、舞台で発表するの。ロックとかバラードとかいろんな曲があって、とっても楽しかったんだから……」

音楽にまったくと言ってよいほど興味のなかった利佳が、いかにも熱心なファン気取りをしているところが、自分でも白々しい。

もっとも、自分の仕事にしか関心のない友里が、音楽フェスなるものを思い浮かべられないことはわかっていた。

だから、早々にその話題を切り上げることにして、それよりも、利佳には気になることがあった。そのことで、友里に訊いてみたかったのだ。