「実はね、野外フェスの帰りに、かつて、大阪万博のパビリオンだったところに寄ってきたんだ。
『宇宙の塔』って、聞いたことがあるでしょ。そこのエリアのことね。
あっ、言っとくけど、五十五年前に開かれた万博のことだよ。
今も昔のまま、いくつかの建物が残されていて、その中の『メモリアル展示館』で、当時の万博で使われた衣装や、道具などが展示されているの。
写真とかもいっぱいあって、当時の万博が、今の万博と変わらないくらい賑わっていたのがわかった。
その中に、不思議な写真があったの」
五十五年前と聞いて、友里はなんとなく箸を止めた。
それは、友里自身がまだ生まれる前の話だったし、そんな大きな出来事があったことは何かの折に聞いたことはあったが、自分には全く関係のないことだと思っていたのだった。
「不思議な写真って?」
利佳は、ほんの気のせいだとは思っていたが、見てしまった以上は、誰かにそのことを話さずにはいられなかった。
「迷子の女の子の写真があったの。コスチュームって言うのかな、お揃いの制服を着た女の人たちが、その子に話しかけている様子を写した写真なの。
だから多分、迷子センターだと思うわ」
「その写真がどうかしたの?」
「その子の顔が、私にそっくりだったの。
私、小学校二年生ぐらいの頃、よく赤い服を着ていたでしょ。それにお母さんが買ってきてくれた白の帽子を被っていた。
その女の子も、まったく同じ格好をしていたの」
それを聞いた友里は、利佳の言ったことの意味が飲み込めないでいるようだった。ふと、視線を利佳から逸らして、天井に這わせた。友里が、何かに思を巡らせるときに見せる仕草だった。