【前回の記事を読む】おみくじを引こうとすると「あの木の葉を1枚採ってきてください」と言われた。何の変哲もない葉っぱに見えるが、実は…

第一章

葉みくじ

振り返ればすぐ日差しを浴びることができたが、社務所をちょっと離れて葉を陽にかざしてみた。葉にはしばらく変化はなかった。

なあんだ、と思った刹那、太い葉脈が盛り上がり、左右の細い葉脈のいくつかのブロックに分かれた。

「わあ、すごい。文字が出てきたわ」

由利子が驚くのも無理はない。

ただの葉っぱに大小の文字が現れたのだ。オレは太陽に透かしてみたらもっと見えやすいんじゃないかと直感して、頭の上にかざしてみた。

そういえば、境内の何人かが葉を持って頭の上にかざしていたのはこのためだったんだ。

「大吉だわ、よかった。あなたは?」

「オレはただの吉……」

「よかったじゃない。ね、引いてよかったでしょ?」

そう言うと、由利子はしばらく黙ったまま真剣な表情で文字を追った。せっかくなのでオレも中身をひと通り読んだ。「富津倉神社」という文字も小さく読めた。鳥居の扁額にもそうあったなと思いつつ、内容はまあこんなもんだろうとも思った。当たり障りのない、大して役に立ちそうもない内容ばかりだった。

そもそも、オレはこういう類いのものは信じていない。だってそうだろ? 個人の未来や現在の状況を、何十パターンあるか知らないがどれかに当てはめて押し付ける。大吉や凶の割合は神社によって違うっていうじゃないか。

人を喜ばせるために吉の割合を増やせば、参拝客がまた増えるのは目に見えている。大体ここの神様はオレたちのことをどれだけご存じなんですかっての……。

今日初めてここに来たオレたちを。仮に何かが当たったとしても単なる偶然か、そう思いたいだけだ。独り言ちていると由利子が言った。

「『葉みくじ』を糸で結んで、そろそろ帰りましょ?」

「ああ、そうしよう。中身は暗記したのかい?」

「ええ、全部頭に入れたわ」

「遺失物、イズル」という一文だけがなぜかオレの目に残った。

だが、境内をぐるりと見渡しても「葉みくじ」を括り付ける場所が見当たらなかった。おかしいな。オレたちは再び社務所で尋ねた。

「それなら、そこの段ボール箱の中に入れてください」

「えっ、葉っぱだからまとめて生ゴミとして捨てるんですか?」

「そうではありません。のちほど神様がご覧になります」

イメージが具体的に思い浮かばなかったけれど、オレたちは言われたとおり「葉みくじ」を段ボール箱に入れて神社をあとにした。