積善の家に余慶あり
『あの出来事は何だったのだろう? あの女性は大丈夫だったのだろうか?』
なんとも言いようのない漠然とした恐怖を感じていた。
何か悪いことが起こる前兆ではないか?
不幸にも、それは的中する。善行が路上に倒れている女性を助けて五日後、善行とひふみは重度の咳と高熱のため緊急入院をする。PCR検査の結果二人とも新型コロナ陽性だった。
あの女性から善行が移り善行からひふみへ移った可能性が強かった。幸いにも渚はここ数日深夜残業、光輝は弓道部の合宿にでていなかった。
渚と光輝が駆付けた時には二人はすでにICUのエクモにつながれていた。
無機質な装置から幾本もの管がでて両親の体に突き刺さっていた。
先生は淡々とした口調で二人に告げた。
「新型コロナに二人ともかかっています。懸命な治療はしていますが急速に重症化しており予断を許しません。どなたか大人の家族の方を呼んでおいてください」
二人は、呆然としどうすればいいか分からなかった。
「俺たちはどうすればいい?」
「分からない……」
「何かすることないのかよ!」
「分からないってば!!」
混乱している頭の中でどうすれば両親が助かるか必死で考えていた。考えていたけれど、この二人の微力な姉弟が出来ることはただ祈ることだけだった。
『お願いします! 神様!! 両親を助けてください、この願いを叶えてくれるなら何でもします!!』
家の神棚に必死で祈っている時、ふと壁に掛かっている白装束二着が目に入った。
『そういえば……、光輝が高熱出した時、両親は近くの豊山八幡神社にお百度参りに行ったっけ、お百度参りって何だっけ?』
スマホで検索すると『日本の民間信仰で、神仏に祈願するために同一の社寺に百度参拝することである』とある。
「要するに、百回お参りしろと言うことね」
二人は顔を見合わせてうなずいた。すぐに、白装束に着替えると神社の前に立った。もし、誰かが二人を見たらその出立ちにギョッとすることだろう。