改新政治に対して反発・反乱
中大兄が皇太子として実権を握るのだが、その手本を聖徳太子に求めていたところがある。新政の綱領を発表している。『日本書紀』に掲載されているが、その考えの出どころは十七条憲法である。焼き直しと言っても良いかもしれない。
ところで、日本の憲法学者で十七条憲法を評価する人はほとんどいないと思われるが、一九九八年にノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン教授(ハーバード大学)は、「十七条憲法に記された民主主義的な考え方は、その後の日本の発展に大きな役割を果たしてきました」(佐藤智恵『ハーバード日本史教室』中公新書ラクレ、二〇一七年)と言っている。
セン教授が評価しているのは十七条の最後の規定、「夫れ事は独りさだむべからず必ず衆とともに論(あげつら)ふべし」である。独断を禁じ、必ず皆と議論して決めなさいと言っている。この考えは『古事記』の中にも採り入れられているのだが、民主主義の教えを七世紀の時代に説いたことを大変評価している。
十七条憲法の「君をば則ち天とし、臣をば則ち地(つち)とす。天覆(あめおお)いて地載せて ……地天(つちあめ)を覆(くつがえ)さむと欲する時は、則ち壊るるに致(いた)るのみ」(三条)と「国に二君非(な)く、民に両主無し」(十二条)を敷衍(ふえん)して新政の綱領は「……臣は朝(みかど)に貮(ふたごころ)あること無し」としている。
つまり、自然界が天地あるようにこの社会も天地がある。天が天皇であり、地が家臣である。天が万物を覆い、地は万物を載せるという、それぞれの役割があり、地が天に代わって万物を覆ってしまえば、暗闇が支配する国になってしまう。要するに、国に二人の君はいらない。民も二人の主人はいらないだろうと言っている。
【イチオシ記事】ずぶ濡れのまま仁王立ちしている少女――「しずく」…今にも消えそうな声でそう少女は言った
【注目記事】マッチングアプリで出会った男性と初めてのデート。食事が終わったタイミングで「じゃあ行こうか。部屋を取ってある」と言われ…
【人気記事】「また明日も来るからね」と、握っていた夫の手を離した…。その日が、最後の日になった。面会を始めて4日目のことだった。