第1章 変化の時代に変革を成功に導く公式とは?

日本の製造業のDXが成功しない3つの理由

分かりやすい例として思い浮かぶのがセブンイレブンの多彩な決済方法である。

現金、Quoカード、商品券、nanacoやSuicaなどの電子マネー、PayPayなどのバーコード決済、クレジットカード、デビットカードなどありとあらゆる決済方法が可能である。これはおそらく過去の成功体験を継承する手法であり、消費者にとっては最高のおもてなしである。

しかし、もしこれと同じことを社内でもやっていたら、大変なムダである。ビジネス的に有益かどうかはともかく、もし店頭決済をnanacoに統一すれば、IT投資も現場の負担も激減するだろう。DXの本質は業務やプロセス、組織の改革であり、その決断はトップだけができるのである。

過去の成功体験が生み出すデジタル家内制手工業とは?

実は、過去の成功体験が大きければ大きいほど、組織の変革が難しくなる。なぜなら、ある事業が成功すればするほど、それを成し遂げた組織やプロセスは、その成功を実現するための形に最適化されていく。そこには成功を築き上げた先輩社員がおり、改善に改善を重ねてきた業務プロセスがある。リスクのある変革に立ち向かうにはあまりにも抵抗が多いのだ。

つまり、実績があればあるほど、プロセス変革は困難になるのである。

このように成功した旧プロセスを温存したままでデジタル化を進めるのは、大きなリスクだ。なぜなら、古いプロセスは、デジタル化によってより強固になり、企業に後ろ向きの投資を強いることになるからである。これは先のセブンイレブンの事例からも類推できる。