これを現代の製造業に当てはめて考えてみるとどうだろうか?
目まぐるしく変わる経営環境の中で、旧来の現物擦り合わせや紙の図面や帳票に基づくアナログなものづくりで世界に勝てるのかという不安は経営サイドにはあるだろう。人手不足の中でこのままのやり方で質の高い生産を継続できるのかという現場の不満もある。Dは十分に大きな値となっている。
また、各社のホームページ上で公開されているIR資料を見ると、DXによる企業変革に取り組むという文言のないものはほとんど見当たらない。経営サイドはしっかりとしたビジョンを示している。
今、不足しているのはF、つまり、まず進むべき最初の一歩は何かを見極めることであろう。
本書のテーマは「製造業DX×3D」、つまり、製造業のDXを3Dでいかに加速するかである。
DXとは究極的には部門を超えた全社的なデータ活用である。3D設計が普及した現在でも、ここから生み出される3DデータはCAD/CAM/CAEといった設計DX枠組みの中にいる。3Dデータを設計部門から解放し、全社的に3Dデータの活用を進めていくことが製造業DX×3Dの起点となる。つまり、設計DXにより生まれた3Dデータを後工程のプロセス変革にも活用するのである。
このデータ活用によって、生産技術、工場、調達、営業、サービスといったさまざまな部門での生産性を向上させ、時にビジネスプロセスの変革を生み出すことが、先行する事例から分かっている。変革の成功に向かっては、この公式が示すように、全社のビジョンに沿いながら各部門の困りごとを解決する最初の一手を見つけることが重要である。
本書では、先の公式のFの値を最大化するための方策を各社の事例や技術動向を模索しながら紹介していく。
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