カーシャの食事をどうするかということについて、サッコは彼なりに知恵をしぼり公平な持ち回り制を考えてみたが、その努力はまったく報われなかった。なぜなら、カーシャはそんな順番などお構いなく、気の向くままにいくからだ。
食事の時間ともなれば、彼は予約もなく、いいにおいのする家にきて「お腹がすいた」と言う。
面食らいながらも招き入れると、出されたものを割と行儀よく平らげ、長く居座ることもなく「ありがとう」と去っていく。
食事が終わっていたり、分けてやるものがなかったりするときには、「悪いが、今日はもうないよ」と言えば、カーシャは悪びれることもなくすっと他へいく。なんの遠慮も気遣いもなくカーシャは村人の家を訪れ、お愛想の一つも言わずに食べて、ただ満足して帰るだけだ。
「急にくるからびっくりしたの。いい子よ。話はちっとも弾まないけどね。今夜はあんたのところかもよ」
最初に食事をふるまった女は、翌朝のバスの中で、まるで当たりくじでも引いたようにおかしそうに話したものだ。
ただ、どこにでもいくのかといえばそうでもなく、彼がはじめから近寄らない家もあれば、一度いったきり二度といかない家もある。そうなると住民たちは勝手に気を回し、彼がくるかどうかがまるで自分たちの気前の善し悪しを測るかのように思いすごすようになった。だから今日も彼は食いっぱぐれることがない。
「おや、カーシャよくきたね。お入り。もうエゴルは先に食べはじめているよ」
息子の体型の倍くらいでっぷりした母親は、カーシャが食卓につくのを待ちかねてミートパイの皿を運んできた。息子と二人暮らしの家庭で、こんな大皿に山盛りになるほど作るならば、彼女が太るのもよくわかる。
「たくさんお食べ。お代わりしたって構わないよ」
真正面に座ったエゴルはカーシャが頬ばるのを面白そうに眺めた。
「どうだ。うまいだろ? おふくろのこれだけは絶品なんだよ」エゴルがそう言うのを耳に入れて、
「それだけじゃないよ」