第2章 理論を少しずつ実践として具現化していく──主に楽器を用いた授業を例に

2-2 楽器の奏法について──教える ? 考えさせる ?

教師:(明るく元気な曲を流す)これはどういう感じだったかな→

児童:明るい曲だったから、ドーンって→

教師:明るい曲だったら強く(叩い)てもいいよね。ジャーンでやってみようかな→

児童:盛り上がっていい→  

教師:じゃあいくよ(曲に合わせて叩く)どう?→

児童:いい→音が高かった→いいと思う→

教師:いいと思った人!(大多数が手を挙げる)→

教師:えぇっ、と思った人!(何人か手を挙げる)→  

教師:どうしてえぇっ、て思ったの?→  

児童:なんか、音が強すぎて→

教師:強すぎた→

児童:なんか、音楽が聴こえなくなっちゃった→

教師:音楽が聴こえなくなっちゃった! あなたはどう思った?→  

児童:同じ→

教師:同じ。試してみようか。強すぎるって意見もあるよ→

児童:じゃあさっきより→

教師:さっきくらい?→

児童:さっきより優しく

この対話のように、納得のいかない表情をしている子どもがいた場合は意見を聴き、大勢の意見に流されないよう配慮します。その結果、子どもはさらに丁寧に聴き取り、他者の感じ方も考慮しながら聴き取っていくようになると考えられます。

教師:この『ぶつける』って、さっき△を付けた(後掲の板書の写真。【図10】参照)、楽器が壊れちゃうような言葉だから、『当てる』っていう言葉を覚えとくといいね→

児童:シンバルを当てる→

教師:シンバルを当てた感じ。ぶつけるだと壊れちゃうもんね→

児童:うん→

教師:優しい感じ。じゃあ、叩いてみます(叩く)→

児童:ポンッ→穏やか→

教師:みんな、どういう風に叩いたらいい?→

児童:優しく→強く!→

教師:どっちだ。優しいと強いは、一緒にできる?→

児童:できない→なんか、ポーンって→

教師:じゃあ、強いと優しくないのか。もう一回叩いてみるよ(叩く)