教師:(シンバルを鳴らす)→
児童:あ、こうやって、縦にやってた→
教師:縦にやるの? こう?(大げさに縦に叩く)→
児童:パーンって→後ろがこうなってて……(身振り)→
教師:こう?(児童の身振りのとおり叩く)→
児童:うーん、なんかさっきと違う→そんな感じかなあ→ちょっと斜めに→
教師:ちょっと斜めにして?(斜めに構える)→
児童:近づけて→擦る感じ→
教師:擦る感じ?(大げさに擦って叩く)→
児童:違う!→もうちょっと速く!→もっと速く!→
教師:もっと速く?(速くして叩く)→おー!(拍手)→
教師:おー! なるほどね。速く擦るんだ→
児童難しいなあ(シンバルを持ち始める)
実演してくれる子どもが助言どおりに角度等を少しずつ変えながら試すことを想定していましたが、子どもの体力的な条件から、楽器を持ち続けることが困難であると判断し、教師が子どもの意見を反映して実演することとしました。
その上で、シンバルの演奏を継続すると、次のような対話が展開されました。
教師:あれ、みんなさっき、『うるさい』っていってたのに、今は『いい音』がするっていってたね。ジャーンが『いい音』なんだ→
児童:慣れてきたんだ→
教師:慣れてきたんだ! そうだ→
児童:最初はびっくりした→
教師:最初はびっくりしたんだもんね
授業開始時、すなわちシンバルを叩き始めた時点では、耳を塞ぐ子どもがいたり、大きすぎる音は苦手な子どももいることを確認したりしましたが、「大きい音=うるさい音」という価値観から「大きくても、いい音は聴ける」というように変容してきたことが見て取れます。
注1 名寄市立風連中央小学校(3学年児童18名)における実践。令和2年9月10日。授業者は大学院生の大野紗依氏。同上書参照。
注2 例えば工事現場の解体音のような「強い」音を録音して、ステレオでボリュームを下げて再生すると、強い音が小さく聞こえることになります。針を落としたような小さな音を大音量で再生すれば、弱い音が大きく聞こえます。
【前回の記事を読む】「シとラの間の音」づくりで音程に対する敏感さなど「違いが分かる人」に育つ!?