1 変化の激しい時代に向けた教育
1-2 総合的な学習
「総合的な学習の時間」では、当初掲げた理念は適切であると考えますが、既述のように「目標」も「内容」も「方法」も学校に任されていたために、「活動」はできても「指導」にならなかったケースが見られました。
そもそも子どもへの「指導」が成立するためには、教師側が「評価」の観点を事前に明確にしておくことが必要です注1)。
そして「評価」の観点を明確にするためには、「目標」も明確でなければなりません。しかし、「総合的な学習の時間」では「目標」は学校が定めることになっていますから、教師側に「評価」の観点がないまま(あるいは職場での共通理解が不十分なまま)、スタートせざるを得ない学校もあったと思われます。
このように、「総合的な学習の時間」が困難であったことの原因として、「内容」や「方法」に関わることはもちろん、実は現場レベルにおいては「目標」が明確になっていなかったことが主要な原因だったのではないかと考えます。
それでは、学校では、子どもたちに総合的な力を育ませることはできないのでしょうか。実は、既存の教科の中でも〈1-1〉で触れた問題解決のサイクル等を考慮して組み込むことで、総合的な力を育ませることができると考えられます。
既存の教科であれば、「目標」と「内容」は示されています。「目標」が示されていることから、教師側が「評価」の観点を事前に明確にすることができます。
「内容」も示されているので、あとは教師側で「どんな『方法』で学習を進めれば総合的な力の育成につながるのか」を考えればよいことになります。
「実務的に手が回らない」といった状況を回避することができるわけです。既存の教科の学習で「方法」を工夫することは、普段の教材研究として行うことができます。また、そうすることで指導のバリエーションが増えることにもつながるといえます。
ここまで整理してきたことを踏まえると、筆者は、〈1-1〉で述べた、「これから先のどうなるか分からない世界をみんなで生き抜いていくための人間としての力を育成する」ことを念頭に置いたとき、各教科はもとより、この「総合的な学習の時間」に大切に向き合っていきたいと考えるのです。