【前回の記事を読む】主体性を持った学習に必要なのは…「問題が解決されていく喜びを伴った」実感

1 変化の激しい時代に向けた教育

1-1 求められる学習の在り方

コラム

筆者(森)は中学校教員時代、技術・家庭科を担当していたことがあります(理科の教員でしたが、免許外の科目を担当することもあるのです)。技術科で木工に取り組んでいたときのことです。

ベルトサンダー(電動のベルト式回転ヤスリ)で木材を仕上げる工程があり、その場面で「まったく指示も何もしていないのに毎年必ず行われる行為」がありました。

それは主に男子が「ペーパーナイフをつくる」という行為です。授業として扱っている木材の他に、小さくて細い端材を見つけて、それにベルトサンダーをかけて、徐々にナイフの形にしていく……というものです。

ベルトサンダーを用いれば、割と短時間でペーパーナイフが完成するのです。当時の私は「何となく毎年同じことがあるものだな」というくらいの印象だったのですが、これはよくよく考えますと「ベルトサンダーという短時間で結果が見える道具によって、試行錯誤や調整ができ、それなりに見栄えのする成果物が完成する」ということが要因だったのかなあと思います。

つまり「短時間で試行錯誤を経験することができること」が大きかったのでしょう。その時間の正規の活動は「本棚づくり」などですが、本棚のパーツをつくるときは、手動のノコギリを使うため、それなりに時間がかかります。加えて、ノコギリを使うという作業は、子どもたちにとっては簡単な作業ではありません。