授業の終了時(すなわち開始時から見れば未来)には、そうした、今を全力で3)楽しんだ姿を実感的に振り返れるような授業をつくりたいと考えています。
そのために、「『関心・意欲・態度』は学習の入り口であり、それに支えられながら調べたり、探したりするのに必要な学習能力が『思考・判断』であり、その成果として身に付けるのが『技能』であり『知識・理解』である」4)といった問題解決のサイクルを意識することが重要です5)。
その結果として、有機的な知識や技能が血となり肉となります。
3)今を全力で、実感を強くもちながら活動することの重要性と関わっては、野球の鈴木一朗(イチロー)氏が、智辯和歌山高校野球部を訪れて行った指導(令和2年12月)にも関連が見られる。
投球では「限界まで強い球を投げる」、打撃では「とにかく遠くに飛ばすように全力でバットを振れる」ようにしておく、という趣旨の内容があった。練習量が過剰になると無意識のうちに力を加減してしまい、長時間の練習の終了時まで体力がもつようにペース配分することになって、今、眼前のボールに全力を込められない。負けられない試合という重圧の中でも力を発揮して結果を残すということはできないということにつながる。
これは、これから先のどうなるか分からない世界という、さながら負けられない試合と同様の重圧がかかってくる未来を生き抜いていくための力を育成する上で重視すべきことと重なるといえる。楽しく、全力で、協働的に、創造性を発揮して……という「今」が、まさに未来にどんどん進入していっている瞬間であり、「今」の態度が、すなわちそのまま未来の姿であるということになる。
4)高浦勝義『絶対評価とルーブリックの理論と実際』黎明書房、2004、p.99.
5)もちろん、人間の行うことですから、常に同じパターンということはなく、様々な状況や展開が起こり得ます。こうしたことは、現在(第8・9次)の学習指導要領解説の「総合的な学習編」で掲出されている「探究的な学習における児童の学習の姿」の図でも同様です(【図表1】参照)。
ここに書かれている「探究の過程」では、「①課題の設定 ②情報の収集 ③整理・分析④まとめ・表現」とありますが、「情報」は①③④のいずれの局面においても収集(②)する必要が生じる場合があると考えられますから、それらの局面(例:③整理・分析の場面において、より適切な分析方法を知りたくなった、とか、④まとめ・表現の場面において、もっとデザイン性を高める技法を知りたくなった)において「今は情報収集の時間ではありません!」等の指導を行うような形で、あまり杓子定規に運用すると、活動の硬直化や形骸化につながる可能性があるといえます。