深海の岩新緑だった白樺の葉が濃緑へと深みを増して、昼下がりの初夏の陽光をはね返している。文字から離れて顔を上げた僕の目に、その緑は驚くほど鮮やかに飛び込んできた。いつの間に、こんな季節になっていたんだろう。椅子から立ち上がった僕は、窓を全開にして外の風にあたった。土と、青臭さの混じった夏の匂いがした。「休憩ですか」分厚い本を広げたまま、老眼鏡を鼻の半分までずり下げて上目遣いに白石先生が尋ねてき…
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