東京都立広尾病院事件東京高裁判決と医師法第21条
(4)医師法第21条は「外表異状」で決着
この判決は、憲法違反との批判があったが、医療界の動揺は大きく、これ以降、警察届出が急増することとなる。「外表異状」について、筆者が知ったのは、判決の解釈についての田邉昇医師・弁護士の論考を読んでからである。
この判決が合憲限定解釈であることをいち早く指摘したのは米田泰邦弁護士(元裁判官)であるというが、外表異状を精力的に広報してきたのが、田邉昇医師・弁護士と佐藤一樹医師である。しかし、明快な解説にもかかわらず、当時は、「外表異状」はマイナーな意見とされていた。
2012年(平成24年)、筆者が日本医療法人協会医療安全調査部会長に就任することとなった。筆者は、東京都立広尾病院裁判について、東京地裁判決、東京高裁判決、最高裁判決に全て目を通し、「外表異状」の合理性を理解した。
日本医療法人協会顧問の井上清成弁護士と協議、医療事故調査制度問題を医師法第21条問題と切り離すとともに医師法第21条問題は「外表異状」(因みに、当時は「外表面説」と呼ばれていたものであり、「外表異状」との言葉を使用したのは、2014年3月8日、鹿児島の「医療を守る法律研究会講演会」での大坪寛子医療安全推進室長《当時》である)で解決することとし、日本医療法人協会の基本方針とした。
医療事故調査制度は「医療の内」の問題として、医師法第21条は、「医療の外」の問題として切り分けて解決を目指したのである。
田邉昇医師・弁護士、佐藤一樹医師、その他有志(後に、「現場の医療を守る会」MLメンバーとなる)、それに4大病院団体の一角を占める日本医療法人協会が組織として「外表異状」を支持したことは大きな力となった。