【前回記事を読む】留学生にぎこちなく挨拶すると、「篠原あずみ、さん?」初めて話すのにも関わらず、彼は私のフルネームをなぜか知っていて……
1 医学祭
「はい。そうです。今度、医学祭で出し物をすることになっていて……」
真琴がフットサル部に入っていることを説明する。
「それで、出し物を水餃子にしようと思っているんです」
あとは真琴の独壇場だった。
「でも、水餃子っていっても、誰も作ったことなくて」
「はい」
「誰か本場の水餃子を皮から作れる人、いないかなぁって思っていて。だから、その作り方を劉さんに教えてもらいたくて、今日はお願いに来たんです!」
またしても真琴は拝むポーズをする。もちろん劉さんは仏像ではない。
「水餃子……」
劉さんはまた小さくつぶやき、考える顔つきをした。
「水餃子、作るの、大丈夫」
しばらく考える間があって、劉さんがぽつりとつぶやいた。
「え?」
「水餃子、よく作る」
「ほ、本当ですか!?」
真琴が声を上げる。
「はい。皮からも、よく作る」
劉さんが少し笑ったようだ。
「中国の家族みんなで、いつも作ってた。お父さん、得意だった」
劉さんが家族を懐かしむような表情をした。
「じゃあ、皮から作り方を教えてもらえませんか?」
真琴がひと際声を高くしてお願いする。劉さんは少し唸(うな)った。どうしようか迷っているらしい。
「……分かった」
劉さんがうなずいた。
「水餃子、作るの、手伝う」
「やったぁ~! ありがとうございます!」
真琴がバンザイのポーズをして喜んだ。真琴の後ろであずみも胸を撫で下ろす。