【前回記事を読む】水餃子と焼き餃子は皮から違う。生地の厚さだけではなく、事前準備からも分かる大きな違いとは
1 医学祭
「本格的な餃子の皮が作れる人っている?」
真琴はいつもの餃子を「焼く」から「茹でる」に変更すればいいだけだと思っていたのだ。
一瞬クラっとめまいがした。しかし、すぐに立て直す。
「大丈夫! たとえそうでも、今、いい案を思いついたから!」
真琴は一瞬の間に復活したようだ。
「いい案って?」
あずみは真琴をたくましいなと思った。
「留学生の劉(りゅう)さんがいるじゃない?」
「劉さん?」
あずみたちの通うM医科大学には、外国からの留学生が何人かいた。その中に、劉さんという中国人の留学生が、同じ看護学部にいるのだ。
「劉さんに教えてもらおうよ! 劉さんも調理グループに誘ってさ。あ、劉さんは何かサークルに入っていたかなぁ?」
真琴は早速、劉さんも駆り出すつもりでいる。
「ちょ、ちょっと待って」
あずみが遮った。
「何?」
「劉さんだって忙しいかもしれないし。それに手伝ってくれるかどうか分からないじゃない?」
あずみが、先走る真琴を止めた。
「大丈夫よ! 劉さん、前に一人暮らしだって聞いたことがあるの。そうしたら絶対自炊でしょ? 中国人だったら、水餃子くらい朝飯前よ。きっと」
「そうかなぁ」
真琴の発想はある意味、前向きだ。いや、無理やり前向きというべきか。
「でも、劉さんに聞いてみて決めたほうがいいかも」
「うん! 明日、早速聞いてみる」
真琴の笑顔がすでに成功を約束されているように輝いていた。
そのとき、餃子の焼けるいい匂いが漂ってきた。
「あ、もうできたかも。焼き餃子だけど……」
あずみがフライパンの蓋を開け、皿をかぶせる。フライパンをひっくり返すと、きれいな焼き色がついた餃子が円盤状に盛り付けられた。
「うっわ~! おいしそぉ~」
その夜、真琴は、呆れるほど餃子を食べて帰った―。