翌日の昼休み。

さっそく、図書館にいた劉さんに声をかけた。

「劉さん」

「櫻井……さん?」

劉さんは思わぬ人物から声をかけられ、驚いたらしい。顔を上げた目は真琴をまじまじと見つめていた。

「少しお話があるんですけど、いいですか?」

劉さんがゆっくりうなずいた。

「場所、移す?」

劉さんが周りを見回し、控えめに聞いた。

「はい、そうですね」

劉さんは日本語がちゃんと理解できる。ただ話すのは苦手らしく、自分から話しかけることは少ない。

後ろで聞いていたあずみも、劉さんときちんと話をするのははじめてだった。

「この時間、まだ学食はうるさいし、天気もいいから中庭のベンチでどうですか?」

今日は晴天で、外のほうが気持ちいい。

劉さんは黙って真琴たちについてきた。

中庭のベンチでは何人か学生たちがおしゃべりしていたが、いくつか空きがあったので、そこに座った。

「お昼休みはいつも図書館ですか?」

真琴がにこやかに聞いた。

「……はい」

静かに劉さんが答える。

劉さんが騒いでいる姿を見たことはない。静かな性格で、いつも教室の隅に席をとって、一人講義を聞いている。真面目な留学生という印象だった。

ちなみに、劉さんは男性で、あずみたちよりいくつか年上らしい。看護学部は圧倒的に女子が多いが、男子学生も何人かいる。

劉さんが学生たちとあまり交流しないのは、静かな性格もあるが、年下の女子学生とは話が合わないからかもしれない。

「話って?」

劉さんが聞いてきた。真琴の後ろにいたあずみにも気づいて目を向けた。