【前回の記事を読む】祖父の怒声に毎日さらされていた小学生の息子…支援学級で落ち着き始めた矢先、今度は「先生に暴力を受けた」と身振り手振りで訴え始め……

第一章 生命力を支える家族

作り話

環境を変えるための転居と転校

お母さんは息子の言葉を信じて転校を決めた。アパートを引き払い、実家から遠く離れた団地に転居した。

実家とは遠くなるものの、公団住宅はお母さんが仕事をする上で利便性が良かった。息子は家に一人でいることができるので、前校より人数の多い支援学級を選び、転校した。

前の支援学級で彼が暴力を受けたと話した男性担任は懲戒処分を受けた噂もなく支援学級の担任を続けた。きっと彼は大げさに話したのだろう。

転校先の支援学級は学級内の人数が多いため、学年別ではなく重度クラスと軽度クラスに分けられていた。二人の女性担任がひとクラスずつ受け持っていた。

彼が入った軽度クラスは会話が可能な達者な生徒ばかりで、彼と似たタイプのADHD傾向の子ども達が多かった。

お母さんは息子との二人暮らしの中で自分のストレスを減らし、いかに仕事を継続するか苦心していた。こばとの連絡帳にはしばしばお母さんの苦悩が書いてあった。

彼は一人で留守番はできたが、細々と起きる様々な問題を処理するにはまだまだ精神面が幼かった。

確かに、彼は嘘をつくと分かっていても憎めない一面を持っていたし、生活力もあったが考え方が幼稚だった。

こばとでは療育時間中、高学年になった彼に自分の考えや感想を持たせるため、日記や作文の課題を与えることがあった。

彼はテーマを与えて作文を書くように言っても、あるアニメーションを見たことだけを繰り返し短く書く。他のことは覚えていないと言う。本当に覚えていないのか、興味、関心がなく忘れたのか、いずれにしても彼の世界は狭かった。