【前回の記事を読む】1人で通学できる息子に、母は安心していた…ところが電車内での“振る舞い”に乗客から苦情が入り…担任がこっそり後を尾けると……
第一章 生命力を支える家族
作り話
予想の斜め上を行く行動に驚愕
通学中の不作法な態度発覚からしばらくたったある日、彼は朝の支度が遅れて、遅刻して登校することになった。
登校や通勤ラッシュ時間とずれていたため彼はバス一本で行き、座席に座ることができた。隣には年配の女性が座っていて、その女性が気安く話しかけてくれたのをきっかけに、彼の得意のお喋りが始まった。
彼は学校で友達にいじめられているとか、先生から暴力を受けているとか、被害を受けているという話を年配の女性に表情豊かに話した。
この女性は、まさか中学生が作り話をしているとは疑いもしない。
大いに彼に同情し、同行して一緒に抗議してあげる!と彼について中学校まで来た。学校側の驚愕とその後の顛末は容易に想像できる。
登下校の電車内での苦情があってから彼の行動に対してはお母さんも学校も注意深く見守ってきたのに、この事態は想定の斜め上だった。
お母さんから連絡を受けた私はお母さんのメンタルが持ち堪えるよう願うしかなかった。彼の行動はいつもその場の成り行きで発展してしまうため予想しにくかった。
お母さんは折れずに踏みこたえた。
三年生になり、やっとやる気が出てきて受験勉強をしていた高等学園は不合格となってしまった。
彼は県立の支援学校の高等部に入学した。高等部では真面目に学業に励んだようだが、就労にはつながらなかった。
高等部を卒業した後、彼は厳しいことで有名な就労継続支援事業所に行くことになった。
そこでは彼にとって厳しい作業と規則正しい日々を送ることになる。集中力が要求される作業環境は彼には苦手なことだろう。
お喋りで見え透いた嘘もつくが、彼は憎めない性格で、文句を言っている時でも笑顔だったりする。
彼にはどんな仕事が合うだろう? 将来は彼の性格が生かせ、生き生き働ける仕事に就いてほしいと思うばかりだ。